娘が小学校の時の話である。

ある日、子供の通う小学校でストライキがあると連絡があった。
いや、正確には、先生のストライキである。
働くママとして悩ましいのは、
当日行ってみないとどういう状況なのかが分からない( ̄Д ̄;;
という点である。
ちょっと説明しよう。
学校の先生には、大きく分けて2種類あるらしい。
一口に言うと、ストライキできる先生 と できない先生 。
どうやら組合に入っているか、そうじゃないか、という事らしい。
そこで、ストライキの日はどうなるかというと、
各クラスに時間をずらして2人ずつ担任の先生がいるが、
ストライキをしない先生 がいるクラスの子供だけを
学校で預かってくれるのである。
例えば、登校して確認してみたら、2年A組はOK、B組は帰って!
という事になる。
でも、そこでやっかいなのが、
先生が前もってストライキ当日にいるのかいないのかを教えてくれないこと。
組合が複数あって、
そのうちのどの組合がストライキするのか、
担任の先生がどの組合に入っているのか
によっても違ってくるらしい。
前日の放課後、お迎えに行ったとき(イタリアは安全上、登下校は必ず親が付き添うのである)、先生に聞いてみても、あいまいな笑顔(⌒¬⌒*) をうかべるだけなのである。
しかも!
そのストライキのタイプがイロイロあって、
児童全員が普通に登校し、
ストライキの先生が授業する時間にあたったクラスだけ自習(=遊びの時間)に
なるタイプがあると思えば、
学校に連れていっても、その場でシャットアウト!
そのままUターンしなければならなくなるタイプまで多種多様。
悩ましいことこの上ない。
今度の金曜日は、ハタシテ イッタイ どうなるんだろう?
さあ、あなただったらどうする?
① 会社を休んで万全を期す。
② 当日の朝に登校させてみて、ダメだったら会社に「風邪」と偽って
病欠を決め込む。
③ 学校の中に子供を1人置き去りにして、逃げる。
【解説】
①②どちらも、もちろん有効な手段だが、ストライキが異常に多いこの国では、有休がなくなってしまうというリスクがある。
特に、子供が病気のときは休まなければならない働くママにとっては、
なるべく有休を温存しておきたいところなので、そうそう休んでも
いられないのが現状。
そこで以前、私がとった方法は・・・
なんと、③学校の中に子供を1人置き去りにして、逃げる。
であった。
それは子供が小学1年生の時の話である。
朝、今日はドーナルノダロウカと思いながら学校に子供を連れて行くと、
学校の外は既に、親と子供たちの人だかり。校舎入り口のロビーも、
テンヤワンヤの大騒ぎ。
当然、前もって準備された案内があるわけでもなく、自分の子供はいったい
どうなるのかを、その辺にいる学校関係者に各々質問している、といった状況。
私もアゼンとしながら子供の手を握り、ハテ、どうしたもんやらと
途方にくれていた時、同じクラスの女の子のママがそっと近づいてきて、
私に耳打ちした。
「そうっと、ここに置いていけばいいのよ」
私「・・・・えっ?どういうこと?」
クラスメイトのママ曰く、
「学校は、校舎の中にいる未成年を、保護者無しで外に出すことを禁じられて
いるのよ。だから、学校関係者に気づかれないように、 子供だけをここに
置いて、 そうっと帰ればいいの。」
このクラスメイトのママも、早く仕事に行かねばならぬという。
決めた。そうするしかない!!
そして私は、子供にこう言い含めた。
「いい?ここで○○ちゃんと2人でしっかり手をつないで立っているのよ。
ママと○○ちゃんのママは、もう行かなきゃならないから。
いいわね。あとで誰か先生がくるから、その先生の言うことをきいてね。」
そして、そのママと一緒に、こっそりと校舎から抜け出したのであった。
しばらく、少し離れた柱の影から、置き去り現場を観察してみた。
わが子が外に出される様子もなく、学校入り口は、もう既に人影もまばら。
あるお母さんと子供が登校してきて学校に入っていったが、しばらくして
出てきた。
どうやら追い返されたらしい。
しかし、わが子が出てくる様子は全くない。
もっと見ていたかったが、後ろ髪引かれる思いで、会社に向かったのであった。
後で子供に、今日の学校の様子を聞いてみた。
予想に反して、かなり楽しかったらしい。
最初、大きな子のクラスに○○ちゃんと行って、お姉さんたちに一緒に
遊んでもらった。
その次、階段を登って、もっと大きい子のクラスに行って、ちがう
お姉さんたちと遊んでもらった。
それからまた、違うクラスに行って遊んだ。
とってもおもしろかったよ。
わが子にとっては、違うクラス、それも上の学年のクラスに行って、
大きいお姉さんたちに遊んでもらったのが、かなりスリリングで
楽しかったらしい。
要するに、教室をたらいまわしにされただけだったのだと思うのだが・・・。
イタリアの懐の深さはここにある。
オーガナイズは最悪、途中もハチャメチャなのであるが、最後には何だか
辻褄があうようにしてくれるのだ。
先生がいるクラスに、先生がいる時間帯だけ、わが子と○○ちゃんを
移動させながら、面倒を見てくれたのだと思う。
たくましく育つ子供の前で、親はただ、ハラハラするだけである。
